『乙女の為の小品集』

近江舞子編、乙女企画によるアンソロジー『乙女の為の小品集』は密林社さまの協力を得てAmazonで販売中。

乙女の為の小品集

乙女の為の小品集

  • 作者: 近江舞子,森田紗英子,珀亞楓,鈴木真吾,黒澤丙,詠村岬,ヒキムスビ,Gabb--,久地加夜子,ym,横田沙夜
  • 出版社/メーカー: 密林社
  • 発売日: 2011/06/12
  • メディア: ムック
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 乙女を主題にした作品集です。

・十編の小説もしくは随筆を収録。
(1)「悪趣味な君は」近江舞子(@OUMI_MAICO)
 小説「乙女」×「雑貨屋、手紙」
作者からの一言
 わたしの、乙女的な、余りに乙女的な「好き」をいっぱい詰め込みました。

(2)「リナシェンテの聖杯」森田紗英子(@sae_tama)
 小説「乙女」×「何かと面倒である」
作者からの一言
 Vivi lascia viviere. 思うがままに生きなさい。そして他人の生き方には口をだすな。

(3)「醜き純潔にぬくもりを」珀亞 楓(@hakua0513bitter)
 小説「乙女」×「清らかさ、潔癖、高潔さ」
作者からの一言
 2人の乙女が出逢い、少女が美しさ≠潔癖であることを知る時。

(4)「乙女憧憬随想録――ある濫読家の手帳から」鈴木真吾(@junk666)
 随筆「乙女」×「あくがれ」
作者からの一言
 なし。

(5)「罪、或いは快楽の受胎」黒澤 丙(@hinoe000)
 小説「乙女」×「女としての目覚めに伴う悪夢」
作者からの一言
 少女としての驕慢、女と云う虚構、それに比例する虚ろな快楽に溺れる錯覚を。

(6)「をとめの姿 しばしとどめむ」詠村岬(@eimura_misaki)
 小説「乙女」×「別離」
作者からの一言
 これが私の乙女像です。少しでも何か心を打つものがあれば嬉しいです。乙女たちに幸あれ!

(7)「リボンを結ばれたネクロノミコン」ヒキムスビ(@hikimusubi)
 小説「乙女」×「猟奇」
作者からの一言
 乙女のごくありふれた失恋のお話です。

(8)「わずらいの恋」Gabb--(@itisnot)
 小説「乙女」×「渦」
作者からの一言
 恋に恋した怪文書。めまいのような何かを感じていただければ幸いです。

(9)「乙女の定義」ym.
 小説「乙女」×「恋愛中毒」/「秘密」
作者からの一言
 なし。

(10)「犬の視界」久地 加夜子(@higahisa)
 小説「乙女」×「父」
作者からの一言
 楽しんでいただけるとうれしいです。


・表紙 「薔薇の乙女」横田沙夜

『夢幻』

近江舞子著、短編集『夢幻』のDeity's watchdog(ディティーズウォッチドッグ)での販売は終了しました。http://www.d-w-d.jp/
 Amazonでの販売はありません。


・二編の小説を収録。
「ゴシックサーカス」
 夢と現を行き交いながら彼女を追いかける“僕”の物語。
ファレノプシス
 自分に嘘をついている”と指摘された女はその嘘を探す。


id:SHADE様から感想をいただきました。
http://d.hatena.ne.jp/SHADE/20111114#1321196763


・黒澤丙様から「ゴシックサーカス」の感想をいただきました。

 ・「僕」と「彼女」の、現実と非現実とを行き交いする世界観が秀逸!
 ・「乙女な日常」と云うのが、想像を掻き立てて呉れます。もう少し詳しく書いて戴けると解りやすいかな、と。
 ・「彼女」と日々逢う為に、睡らなければならないと云う「僕」の焦りや憔悴が伝わってきます。
 ・そして現実に於いて「彼女」の正体を識った時の「僕」の行動が、夢から醒める事の出来ない閉鎖的な感覚に基づいて居る様に想えました。
 ・現実の「彼女」に拒絶される「僕」の、絶対的な絶望が、現実味を帯びて居て、そこを描く描写が凄いと想います。
 ・「今まで何処に行ってたんだ」、そして、「彼女は僕の恋人なんだ」と云う科白が、夢と現実の渾沌の中で紡がれた、狂気性を孕んだ危うさが有って素敵!

・「ゴシックサーカス」冒頭より

 目の粗く不均等なノイズが揺れた。震えた。次第に姿を現したのはピアノで温かに奏でられる、天国の扉をそっと叩くようなガブリエル・フォーレの『シシリエンヌ』。どんなアルコールよりも強い陶酔が僕の胸にもたらされた。そう。今宵も幕が開ける。
「こんばんは。パーソナリティーの樹海です。始まりました。樹海『ゴシックサーカス』。午前零時にまたここで会えましたね。一週間、このときをずっと待っていました。あなたはどうでしたか。それでは今夜も乙女なクラウン、道化のわたしがあなたを電波のサーカスにお連れ致します」


・表紙

『深淵』

近江舞子著、短編集『深淵』は密林社さまの協力を得てAmazonで販売中。

深淵

深淵


・二編の小説を収録。
「罪の香りは芳しく」
 仮令、それが小さきものであっても罪を憎む男がいた。出逢った、罪を重ねる女たちを神に代わって次々に裁いていく男。その行き着く先は。
「たったひとり」
 表題通り、孤独を愛するたったひとりの男がいた。しかし、彼に寄せられた手紙から男の心は揺らぎ始める。


・黒澤丙様から感想をいただきました。

「罪の香りは芳しく」を読ませて戴いたのですが、本当に惹き付けられました。
 七つの大罪である女達と、「シン君」と云う男性の互いの駆け引きや会話の妙は凄いと想いました。
 甘くも残酷な官能的な描写に、読んで居る此方が、男女の秘密を覘き観た気がします。
 そして結末に到る場面で、この上ない慾望を果たした女性達の、ある種愉悦とも云える恍惚に浸る様が感ぜら
れました。
本当に、大好きな御話です。
 叉、「たったひとり」では、理解者を得られぬ青年と、青年を想う女性の、絡みそうで交わらない、どこと
なく切ない絆を感じました。
 理解者が一人でも居るのなら、人は幾らでも生きて往けるのだとも想いました。


・松尾憂雪様から感想を頂きました

嶽本野ばらさんと、太宰治さんが好きと伺いました。
本作「深淵」は其の意志を貫いた作に思えました。
甘美でどす黒い、人間の深淵を描く、と云う文芸作になったと思います。
どちらも謎のある作で、其等は読者には良いスパイスになったと思います。


罪の香りは芳ばしく、について
主人公の出生の謎と、行動動機の謎と、二つが程好く混ざった感じが致しました。
何処までも幽かな主人公が、罪に飲まれ飲み込まれる、享楽のある作と思いました。
前回亡骸が短編の幻想集の如き作集でしたから、長い作を楽しむのも良いと感じました。
私が思うに、太宰治の作風は、語り、だと思います。
近江さんの作風にも美文はありますね。
情景を上手く描いていて、ヴィジョニカルであると感じました。
内容をグロテクスに描かない所が、主人公の性格であると思えましたが、少しアッサリと書いていると思いました。
炎、月影、教会は印象的でした。


たったひとり について
美しき主人公は同じですが、謎が相手に傾く、と云うのは面白く読めました。
唯、感情の揺れが、やや、淡白に描かれている気がしました。
素っ気なくて、孤独な青年、其は描けていると思いました。
人物が描ければ、良しと私は考えます。
世界の終わりという名の雑貨店」や「カフェー」のシリーズにある、ヤンワリとした影、は近江さんに合っている気が致します。
徹底した写実、と云うのは無いので、描いても良いと感じましたが、ストーリーを読ませるには、ある程度仕方ないのかも知れません。
でも、書こうと思えば書ける余地、が残っている気が致しました。
文章に個性が滲む人は、結構好き勝手に書いても良い、と私は考えます。

『葬列』

近江舞子著、短編集『葬列』は密林社さまの協力を得てAmazonで販売中。

葬列

葬列

・三編の小説を収録。
「少女四季」
 四季にちなんだ四人の少女たちが各々、純粋に生きる。そして、季節と少女たちが交わって一つの物語が生まれた。
「楽園に生きる」
 神が望んだ世界。それはとても美しかった。
「きらめき」
 唄うことのほか何もない少女。彼女はひとりではなかった。


・感想を黒澤丙様からいただきました。

 孤獨な人間が織りなすヱゴヰズム、理想への渇望、往々にして孤獨は寂しく、そしてそれ故に残酷な遊戯を想い付いては哄笑の聲をあげて嗤う。
 嘘を吐く事で自分、そして関わる人を守ろうとする一見すると哀しい孤獨の様でもそれは酷く優しい。そして人間の様に、或いは動物的な本能のみに突き動かされる神や、自分でさえ気付かぬうちに新たな人格を創り出して仕舞う悲愴な心。
 全ての作品が輝いて居て、どの小説も読み手の心にじんわりと染み入るような優しさと同時に、孤獨とヱゴの鬩ぎ合う、或いはどちらに転んでも可笑しくはない程の危うい均衡。
 その調和が見事に保たれた世界観は本当に素晴らしいと想います。